• Japanese

MENU

共通認証システム 三田キャンパス 慶應義塾公式ウェブサイト 慶應義塾の電力使用状況

特集

横浜初等部開校にあたって

日吉ITC 山根 健


2013年4月、慶應義塾一貫教育校の2つ目の小学校として横浜初等部が横浜市青葉区に開校した。現在では多くの学校で校務や教育が情報化されているが、横浜初等部も情報化に対応できるネットワーク環境を整備することになり、開校後の管理運用と合わせてITCがその任務を担うことになった。

ITCの中で当初この任務を担当したのはITC本部と三田ITCだった。横浜初等部開設準備室も当初は三田にあり、校舎の建設を管轄する部署も三田にあったからであろう。

横浜初等部に最寄りの日吉ITCがこの任務に加わることになったのは、開校前年の2012年5月。ネットワーク工事の施工業者やネットワーク機器の納入業者の選定を始めようとしていた。

この段階では校舎はまだ建設中である。キャンパス内に建物が新築されるのは時々あることなので、建設中の建物のネットワークを整備することは稀ではない。ただ今回は新しい敷地に新しい学校が開設される。ITC担当者はまだ現地に行ったことがなく、既設キャンパスに隣接していないのでふらっと見にも行けず、図面だけで現地のイメージが湧かない。敷地が長方形ではなく斜面にあるため建物の形状も変則的で、なおさらイメージが湧かない。またネットワークの整備は横浜初等部の意向に基づいて考えないといけないことも多いが、その意向が検討中の場合もある。そうした中で、原則として全ての教室・部屋に情報コンセントを設置すること、いくつかのエリアに無線LANの基地局を設置すること、などの基本方針が定まり仕様を確定した。これに基づいて業者が選定をされた頃にはもう季節は夏になっていた。

ネットワーク工事を始めるにあたって施工業者とともにITC担当者が初めて現地に入ったのは2012年8月。校舎は4階建てのはずだが、一部はまだ3階部分までしかない。これから作られると聞く。竣工は1月と聞いている。あと5か月で間に合うのかと不安になる(結果的には間に合うのだが)。そしてヘルメットをかぶって建設中の校舎に入る。当然冷房はないので暑い(工事現場で働く方々には頭が下がる)。天井や壁がまだないところがたくさんあり、これから配線する経路がよく分かる。この状態でケーブルを通線できると楽なので、そのための調整が進む。

季節が秋になるとネットワーク工事が本格化した。建物の構造が変則的なことに苦しむ。図面の上では大丈夫だと思っていた経路で実際には通線できない、といった予定外の事態がいくつも起きる。その度に善後策を練る。また、横浜初等部から新たなネットワーク利用の企画が出る。これにも対応する。それでも予定どおり2012年12月早々に工事が終わった。

続いてネットワーク機器の納品に移った。建物の構造の制約で設置場所が狭いところがある。うまく設置できるか不安だったが、なんとか12月中に完了した。これでネットワーク整備の山場を越えたことになる。

年が明けて2013年。建設工事も終わり、1月には横浜初等部開設準備室が三田から移動してきた。いよいよネットワーク環境が整備段階から運用段階に移り始める。整備するものも、校務システムや図書システム、ファイルサーバなど、具体的なサービスに変わってくる。横浜初等部開設準備室の教職員と調整しながら、提供するサービスの詳細を確定し、設定する。4月、入学式直前、ファイルサーバの設定のために横浜初等部を訪れ、なんとか開校前に最低限行わなければならない作業を全て完了できた。

2013年4月、横浜初等部は開校し、最初の新入生を迎えた。ITC担当者はその場にはいないが、ITCとはそういう陽の当たらない存在であるもの。無事当初の任務を終えられたことに満足し、感無量の心境になったが、話はこれで終わらない。むしろここからが本番である。

2013年度は、在籍する児童は1学年のみ、教員も最終的な人数よりも少ないため、ネットワークの利用は学校が完成した時に比べると限られる。他の一貫教育校では情報担当教員や最寄り地区ITCの委託職員がネットワーク環境の管理運用を担っているが、横浜初等部の限られた数の教員では担い切れず、日吉から委託職員が移動するのは機動力に欠け、終日担当職員を置くほどの業務量はない。

このため、2013年度の管理運用体制は、ネットワーク利用者からの利用相談や障害の疑いの連絡は横浜初等部事務室が1次窓口となり必要に応じて日吉ITCに相談され、日吉ITCから横浜初等部事務室に対応を依頼する形をとった。時には事務室職員にサーバへの操作を依頼することもあり、これは大変心苦しい。そしてどうしても現地対応が必要な問題が生じた時には日程を調整して日吉ITC職員が横浜初等部を訪問して対応することとした。

このような体制はいつまでも続けて良いものとは思っていない。年々利用者が増えれば利用相談は増える。機器は何年も稼働すれば老朽化し、故障する確率が上がる。日吉ITC職員が現地対応する日程を調整しよう、といった悠長なことは言っていられない障害も発生するかもしれない。今後、学校の完成状況を見ながら見直しを図ることになるだろう。

日本全国には何万という小学校、中学校、高等学校があるが、その中で校務が情報化されていることやコンピュータ教室が設置されていることは珍しくないだろう。一方で、全ての教室・部屋に情報コンセントを設置するといった整備方針や整備・管理運用に割く人員規模については他校から見ると議論があるかもしれない。それでも横浜初等部にとってベストな体制、他校から見ても参考になるような体制をこれから検討したいと思っている。

最終更新日: 2014年10月17日

内容はここまでです。