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特集

事務用クライアントPCのリプレイス

ITC本部:竹内 連


5月までの自分であれば、「4年に1度」と言われたらまずオリンピックしか思い浮かばなかっただろう。6月、ITC本部に異動となると、そこには多くの「4年に1度」が存在した。そして、今年開催された「4年に1度」の一つが、職員の事務用クライアントPCのリプレイスだった。2000台以上という規模のみならず、デスクトップ型の導入、アプリケーション配布方法の変更など、多くの新しい試みを伴ったことも考えると、ITC本部にとってはオリンピックさながらのビッグイベントだったと言える。

今回、利用者側から調達者側に自身の立場が変わったことで、利用者側の利便性や要望を重視したいという思いの一方、セキュリティ対策等さまざまな観点から目を瞑らざるをえないことが多々あること、その狭間で多くの難しい判断が求められるということを初めて知ることとなった。

リプレイス後、さまざまなトラブルが発生し、利用者に多大な不便を強いたことは大いに反省する部分であるが、つい先日まで利用者であった私が今回のリプレイスに際するITC本部の取り組みの内容を説明することで、利用者側と調達者側のあいだに存在するギャップを少しでも埋めることができればと思い、本稿を担当させていただいた。

OSの選定に伴う諸問題

昨年すでにWindows 10がリリースされている状況ではあったが、導入PCのOSはWindows 7の継続という道を選択した。これには、内製している基幹システムや、職員の業務によく用いられるMicrosoft Accessのモジュール等がWindows 10上で正しく動作するかどうかという点について、十分な検証期間が得られないといった理由があった。

このWindows 7の選択はいくつかの制約を伴った。MicrosoftのWindows 7のサポートは2020年1月に期限を迎えることが発表されており、今回導入するPCは2019年夏までの3年間のみの利用となる。また、第6世代Intel Coreプロセッサー(CPU)「Skylake」以降を搭載したPCで動作するWindows 7のサポートを2017年7月で打ち切るとMicrosoftが一時発表したことにより、調達当時、主に販売されていたSkylake搭載マシンを除外して2000を超える台数のPCを確保しなければならなくなり、機種の選択の余地を大きく狭めることとなった。その後、Microsoftが方針を撤回してSkylake搭載PCも2020年1月までサポートを延長すると報じたのは、リプレイス作業真最中の8月半ばのことであった。

デスクトップ型の導入背景

2015年度、事務用クライアントPCの修理に要した金額の年間総額は約200万円に上る。故障内容として多いのは、「液晶画面の割れ」、「キーボードの不具合」などであった。液晶画面破損の原因としては、持ち運びの際の衝撃や、キーボード面に物を置いた状態で画面を閉じてしまったことによる破損などが挙げられる。机上の飲み物をこぼしたことによる故障も少なくなかった。いずれもノート型に特有の原因である。

さらにノート型のデメリットとして、液晶画面やキーボードの不具合の場合に、端末ごとの交換を余儀なくされるという点があった。また、ノート型はディスプレイが15.6インチを超えるモデル、または解像度がWXGAを超えるモデルになると単価が大きく上がる傾向があり、コストの面から、画面の拡張を実現することができず業務効率向上の妨げとなっていた。

これらの背景から、今回のリプレイスではデスクトップ型の導入を基本路線に定めたが、病院のように限られたスペースに設置せざるを得ない部署や、自席から移動して業務を行うことが多い部署など、ノート型の継続利用を希望する部署もあり、結果としては50:50程度の割合で導入することとなった。

なお、先述の飲み物等のこぼれによる故障の経験から、PC本体をディスプレイの背面に背負わせるモデルを選定したのだが、PC本体の所在に気付かず、前面に見えるディスプレイの電源ボタンを押してPCを起動しようとした利用者からの問い合わせがヘルプデスクに殺到したのは盲点であった。

セキュリティワイヤーとHDD暗号化ソフトの導入

デスクトップ型の導入にあたり、検討が必要となったのは端末自体のセキュリティである。ノート型の場合は、終業時には机の引き出しや鍵のかかるキャビネット等に端末をしまっていたが、デスクトップ型は収納することができないため、物理的なセキュリティ対策としてセキュリティワイヤーを1台につき1本配布することとなった。また、万が一端末が外部に持ち出されてしまった際の対策としてHDD暗号化ソフトを導入した。

デスクトップ型の納入作業

ノート型からデスクトップ型への移行は、PCの配布(納入)作業にも大きな変更が生じた。ノート型の場合は、本体・電源コード・マウスの3点のみであったのに対して、デスクトップ型は、本体・ディスプレイ・電源コード(2本)・キーボード・マウスのほかディスプレイに本体を装着させるための部品など数多くのパーツからなるため、相応の搬入用スペースおよび組立て用スペースが必要となった。従来は、中規模の会議室を1室確保して各部署の担当者にPC(ノート型)を受け取りに来てもらう運用が可能であったが、今回は三田キャンパスにおける実績を例に挙げると、結果的に、会議室2室、大教室1室、中教室2室を要した。デスクトップ型は組み立ててから各部署へ運搬し机上に設置するという作業を伴ったが、上述のセキュリティワイヤーの取付けが一筋縄ではいかない環境が多かったり、また、夏場ということもあり天候の急変に遭い、突然のにわか雨により運搬作業を中断せざるを得ないことがしばしばあったりしたため、事前に各部署と調整していた納入予定時刻を著しく過ぎてしまうことがあった。

光学ドライブの要否

近年は、ソフトウェアや周辺機器のドライバもオンラインで取得することが多くなっており、またクラウドサービス等の普及によりデータのやりとりもオンラインで行えるようになっている。これらの背景を受けて、今回、デスクトップ型では光学ドライブ非搭載のモデルを導入したが、関係機関へのデータ提出や録画データの再生等で光学ドライブが必要となる業務の存在が複数件報告されている。また、現在、各部署に設置されている複合機・プリンタのドライバのインストールメディアには光学メディアを利用しており、光学ドライブの必要性や搭載方法については今後引き続き検討が必要となる。

次回のリプレイスに向けて

リプレイス機器の選定にあたっては、既存の機器のデメリットや課題等を踏まえて検討を行うが、今回のリプレイスでは、既存の課題が解決される一方で新たな別の課題が生じることが大変多いことが分かり、その対応や運用方法を予見して検討しておく必要があることを認識した。

次回のリプレイスに際しては、Microsoftのサポートをはじめとした最新の諸情報を敏感に入手すること、Windows 10におけるソフトウェアや基幹システムの動作検証作業、納入・配布・運用までの一連の流れを見据えた入念な計画・準備が必要なのは明確である。従来より1年早い周期で訪れる3年後のリプレイスに向けてすでにスタートは切られている。今回のリプレイスの経験を十分に活かすべく、余裕を持って検討と準備を進めていきたい。


最終更新日: 2017年9月15日

内容はここまでです。