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巻頭言

大学における情報空間

ITC 所長:中村 修


大学に職を得て世界の様々な大学を訪れる機会に恵まれ、それぞれのキャンパスが醸し出す大学の姿勢の違いに触れることができたことは、今の自分にとって大きな経験でした。街に同化したケンブリッジ大学やMIT。街の喧噪とは高い壁で隔離されたIITマドラス校。80年代ソウルにあったKAISTは、機関銃を持った兵士が入り口でキャンパスを守っていました。それぞれの地域や時代にキャンパスで学び、研究をする学生や教職員の安全安心を守りながら、地域や社会との関係、そして大学のあり方を具現化してきたキャンパスという空間は、大学における情報空間を作っていく上でも多くの示唆を与えてくれます。

インターネットが社会のインフラになり、地球を取り巻く情報空間が人間社会にとって当たり前となった今、大学における情報環境は大学において特別な施設やサービスではなく、人々が暮らす街とキャンパスの関係のように、どんな大学にしていきたいのか、大学の基本的な考え方が具現化されたものでなければいけません。

今、大学の情報空間は、サイバーセキュリティという名の下に、セキュリティ強化が叫ばれています。慶應義塾も例外では無く、多くのサイバー攻撃に曝され、社会からも大学のセキュリティレベルの向上に対する圧力が高くなってきています。このような状況の中で、大学の情報空間に責任を持つITCは何をするべきなのか。高い城壁を築き、守衛に機関銃を持たせ、キャンパスに入ってくる人々を検閲し、閉ざされた情報空間を整備することを慶應義塾に集う皆さんが望んでいるとは思いません。それではどうやって安心安全で、みなさんが気持ち良く過ごせる空間を作ることができるのか。

塾生・教職員の情報リテラシの向上こそ、キャンパスを安心安全で住みやすい空間にしていく最善の方法です。

大学のキャンパスが醸し出すレベルの高さが、邪悪な気持ちを持った人が入りづらい空間を作っていくのと同じように、キャンパスの情報空間を利用する皆さんの情報リテラシが高ければ、外部から攻撃しづらい情報空間を作ることができます。教員個室に鍵がかけられるのと同じように、システムにはパスワードがあります。銭湯の下駄箱の鍵が実は数通りしかなく、同じ鍵で他の下駄箱が空くことは良く知られていますが、パスワードにも強さや種類があります。どのようなパスワードをつけるのかは、みなさま方にお任せしますが、簡単な数字や単語は、悪意を持った人にとっては簡単に想像することができます。また、新学期になるとキャンパスの入り口で大学とは関係のない団体が、言葉巧みに勧誘することを皆さんは知っているので、学生や新入生には注意されていると思います。今、フィッシングというあたかも正しい送信元を偽って、IDやパスワードを盗む攻撃が流行っています。実際にどのような勧誘があるのかなどの情報が、大学と関係無い勧誘に誘われないようにできるのと同じように、どのようなフィッシングメールが来るのかなどの情報を知っていれば、それらの攻撃に引っかからないようになります。利用者一人一人の意識が高ければ、安心安全な空間を作っていくことができるというわけです。

キャンパスに暗い空間をなくすために街灯を設置し、警備員を巡回させ、トラブルが事前に起きない環境を整備するのと同じように、ITCは情報空間の見守りをおこなっていきます。しかし、最も効果的に安心安全な大学の情報空間を作っていく方法は、キャンパスの主役である皆様が情報セキュリティに関心をもって行動して頂くことなのです。ITCでは、情報公開を積極的におこない、今何が起きているのかを皆様に知って頂き、皆様の情報リテラシの向上に少しでも貢献し、延いては慶應義塾を安心安全な情報空間にしていくよう努力していきます。

最終更新日: 2018年9月12日

内容はここまでです。