• Japanese

MENU

共通認証システム 三田キャンパス 慶應義塾公式ウェブサイト 慶應義塾の電力使用状況

提言

「無線LANから考えるこれからのキャンパスネットワークの運用」

ITC副所長 中村 修


 湘南藤沢キャンパスでは、この夏、キャンパス内の無線LAN基地局のリプレースをおこなった。またここ数年、ITCでは、信濃町を含めすべてのキャンパスで無線LANの環境整備をおこない、利用者の利便性確保を目指している。無線LAN環境の整備は、どの大学でも至極普通におこなわれている事業であり、何を今更と思われるかもしれない。しかし、無線LANを取り巻く状況は、ここ数年で劇的に変化してきている。

 私は湘南藤沢キャンパスで演習がある情報系の授業をおこなっているが、近年、無線LANの環境が貧弱で授業に支障をきたすことがあった。また多くの教員の方から、無線LAN環境への苦情がITCに寄せられていた。私の授業の履修者は60人ぐらいであるが、授業によっては200人以上の学生が1つの教室でネットワークを利用しながらおこなわれる授業も珍しくない。1つの教室で60人や200人が同時にネットワークを利用することを想定していなかったのか?といわれると、実はこれは想定内であったはずである。にもかかわらずなぜ支障がでているのか?

 近年スマートフォンの普及で、多くの学生が無線LANデバイスを複数台持ち歩く時代となった。200人が一つの教室にいれば、400台の無線デバイスがそこにあることになる。すなわち教室の座席数のN倍の無線LANデバイスをサポートする必要が生じている。また、こちらの方がもっと深刻な問題なのだが、人によってはPadなどをネットワークにつなぐために、モーバイルルータ(携帯事業者が提供している携帯型アクセスルータ)を使っていたり、スマートフォンをWiFiテザリングで利用している場合もある。このようなモーバイルルータやWiFiテザリングは、ITCが設置した無線LAN基地局と有限の電波帯域を取り合うことになり、教室内の無線LAN環境は、一段と悪い状況になる。教室内では、モーバイルルータやWiFiテザリングをOFFにしてもらえれば、もう少し状況は良くなるとは思うが、現在はITC側でやれることから先ずは実施するという段階であり、無線LAN基地局の高機能化や電波帯域(2.4GHz帯と5Ghz帯)の振り分けなどITC側で実施できることからまずは手を付けている。

 しかし、近い将来、キャンパスネットワークの運用は、学生たちの何らかの協力を得なければ運営できない時代になると思う。50席の教室に、48人の学生が来たとする。学生は空いている席を自分で見つけて着席するので授業は滞りなく実施することができる。もし学生が、席に荷物を置いていたり、席を列べて横になっている学生がいたら、お互い声を掛け合い、荷物をどかしたり、寝そべるのをやめて席を空けるだろう。これは、お互いが、状況を把握し自律分散的に対応できるからである。現在の無線LAN環境は、教室に入ったら自分が座る席は無いということは何となく分かるが、教室の中がどんな状況になっているのかは、自分には分からない。それが今の状態だと思う。今年湘南藤沢キャンパスで導入した無線LAN装置には、無線LANデバイスのロケーション情報を取得する機能がある。この機能を使って、教室内の無線デバイスのヒートマップ(どの場所に無線デバイスが集中しているかを温度分布図のように表限したもの)を学生に提示し、学生が自ら無線の混雑状況を把握することができれば、不必要な無線ルータの電源をOFFするなどの協力をしてくれるような世界が作れるかもしれない。

 ネットワークインフラは、今やあって当たり前、ちゃんと使えて当たり前の時代になった。このような時代だからこそ、キャンパスネットワークは、どのようなサービスがキャンパスでは提供されていて、それぞれが今どんな状況なのかを利用者に分かるように努め、利用者がお互い協力しながら利用できる環境を提供していくことが重要だと思う。また、大学を始め諸学校の情報インフラである慶應義塾のキャンパスネットワークでは、この環境を使って情報インフラのことを理解している学生が輩出できればそれ以上のことはないと思う。

最終更新日: 2013年11月12日

内容はここまでです。