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提言

日吉ITC利用者協議会について考える

日吉ITC 所長:種村 和史


長らく日吉ITC所長を務めてきたが、極端な文系脳かつ生来のものぐさで、ITCの業務の詳細についてはほとんど理解しないままにきてしまった。今さらではあるが、たいへん心苦しく思っている。そんな頼りない所長ではあったが、数少ない所長らしい仕事の一つとして、年2回開催される日吉ITC利用者協議会で議長を務めてきた。

ITC利用者協議会は各キャンパスごとに組織され、ITCの行う様々な事業の報告を受けたり審議したりするための会議体であるが、各キャンパスの特性によってその位置づけと性格も多様であるらしい。そして、中でも日吉の利用者協議会はずいぶん特殊であると最近感じている。それは、利用者協議会を構成する委員がどのような組織から選ばれて出ているかに由来している。

例えば三田地区の利用者協議会で言うと、各学部から任命された委員に一貫校、諸研究所や事務部門からの委員が加わって構成されている(らしい)。つまり、委員がその所属組織と緊密に結びついた形で、利用者協議会はできあがっている。それに対して、日吉はどうかというと、三田と同様に各センター、一貫校、各事務部門から出ている委員もいるけれども、大学教員の委員の多くはその所属学部から出ているわけではない。これは日吉キャンパスの特徴に由来する。日吉キャンパスでは7学部の1・2年生に対して主に語学や総合教育科目の教育を提供している。日吉所属の大学教員もそれぞれの学部に所属してはいるが、同時にドイツ語・フランス語といった語種や人文・社会・自然科学といった学問分野ごとに、学部を跨いで部会が構成されている。そして、利用者協議会の委員も学部の代表としてではなく、各部会から選ばれて出ているのである。これによって、日吉ITC利用者協議会も他地区とは異なる性格を帯びることになる。

ITCと各キャンパスの教職員という関係から見た場合、ITC利用者協議会はアウトプットとインプットの双方で重要な目的を持っている。アウトプットとは、ITCが管理運営する義塾のIT設備・サービスについての情報を利用者協議会においてアナウンスすることによって、委員を通じて各キャンパスの教職員への周知を図るということである。インプットとは、ITCに対する教職員の要望を、各委員を通じて聴取し今後の事業計画に役立てるということである。

アウトプットの面から言えば、日吉ITC利用者協議会は日吉所属の大学教員に情報を周知させる媒介として、充分に機能することは望めない。これは他地区と異なる点である。その委員が各学部、あるいは学科・専攻などの学部内組織から選出されていれば、委員は例えば教授会のような公式な会議で必要な情報をアナウンスすることができる。ところが、日吉の利用者協議会委員の選出母体である各部会は、その性格に濃淡の差はあるが、恒常的な集まりを持たない場合が多い。年1、2回顔合わせの機会があるだけ、それも部会に所属する全員が出席するわけではないという部会も複数あるらしい。そのような場合には、利用者協議会で出た様々な情報を部会所属の教員に伝達する仕組みや機会がないということが往々にして起こり得る。アウトプットの機能を必ずしも期待できないわけである。

ならば、委員の構成を変更して、三田と同じように各学部から選出することにすることにしたらどうだろうか。それがベストとは思えない。なぜならば、そうした場合、利用者協議会のもう一つの大切な目的である、教職員からの要望の聴取というインプットの機能に影響が出るだろうからである。

先に述べたとおり、日吉所属の大学教員は、語学の授業を担当したり学部共通の総合教育科目を担当している。つまり、それぞれは別々の学部に分かれているが、教育の内容は、おおむね学部を越えて共通したり重なっていたりしている。ITに対する要望は多種多様であろうが、大学教員について言えば研究分野のニーズに由来する要素が大きいであろう。学部・学科が専門領域を反映している他地区とは違って、日吉の教員それぞれの専門領域はその所属する学部と対応しているわけではないので、学部ごとに委員を出すよりも部会ごとに出している現在の方式の方が、ITCへの要望をインプットするためには合理的なわけである。

このように、日吉ITC利用者協議会は、アウトプットとインプットで矛盾を抱えているのである。これが日吉キャンパスの特性に由来するものである以上、抜本的な解決は恐らく難しいであろう。

それではどうすべきか。重要なことは、このような条件のもとに利用者協議会が組織されていることを、日吉ITCとしてはっきり認識し、その上で対応を考えることだろう。個人的な見解としては、日吉ITC利用者協議会のインプット機能をより重視すべきであろうと思う。つまり、研究教育の面でどのような活動が日吉で展開されていて、それをサポートし発展させるために、ITCとしてなにが求められているかを、聴取する場としてより活用すべきであると思う。

アウトプット機能の弱さはどのように補っていくことができるだろうか。二つの方法が考えられる。まず、義塾全体で共通する情報については、学部を代表する立場で出ている他地区の利用者協議会の委員から教授会などの場で報告してもらうことで、日吉所属の教員にも情報共有してもらうことができるだろう。そのためには、ITC本部と各地区ITCとが連携して、委員から全教員に伝えてもらいたい情報を選別して依頼する必要がある。

日吉地区独自の問題に関しては、重要な情報は日吉ITCから直接、日吉所属の教職員へ広報する手間をかけるしかないだろう。日吉は教員構成から言っても、また若い学生の学ぶ場だということから言っても、慶應の諸キャンパスの中でITCとしての広報活動が最も求められるキャンパスである。日吉ITCは他地区に先駆けて広報機能の強化に務めるべきであろう。

以上の2つの方法のいずれについても、情報の厳選ということが鍵になってくると思う。利用者協議会にかかる案件は多岐にわたるが、一般のユーザーにその中の何を知らせることが求められているのかをITC全体としても各地区としても吟味し、広報すべき事項を厳選し、またどうしたらわかりやすく、また確実に伝えられるかを考え工夫する必要がある。ITCが情報の管理者としてのみならず、情報の発信者としても義塾をリードする存在になることを期待する次第である。

最終更新日: 2015年9月4日

内容はここまでです。