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提言

Augmented Campus

湘南藤沢ITC所長:中澤 仁


ひょっとしたら慶應だけかもしれませんが、大学のキャンパスは、世の中の、特に街の進み具合とは途絶している感があります。街では、色々なものの状態をリアルタイムに検出して、その情報に基づいて人が行動を最適化したりする、いわゆるスマートシティ的な発展が目覚ましいのはみなさんの知るところです。駐車場の満空状態は日本全国どこでも、ウェブ上に掲載されていますし、空気中の汚染物質濃度も、日本全国どこでも24時間計測されています。これに対して慶應のキャンパスでは、会議室の空き状況や、教室内の二酸化炭素濃度、キャンパスに滞在している学生・教職員の人数など、ありとあらゆる情報がそこには存在するのに、ほとんど獲得されず、従って活用可能になっていません。また授業も、フィールドワーク先から遠隔受講したり、後から振り返ったりすることを考えれば、これを多視点全方位録画して、グリグリと視線を変えながらVR再生可能とするようなことを、そろそろ考えていかないといけません。このように、情報技術で拡張されたキャンパスを、Augmented Campusと呼ぶことにしましょう。

ところでITCは、キャンパスネットワークの利用状況を記録しています。この情報を用いると、例えばセキュリティ・インシデントが発生した際に、その原因を調査することができます。この記録のためには、ITCが管理する機器で生成される値を、ソフトウエアが常時獲得しています。このソフトウエアはある意味ではネットワークを対象としたセンサーであると言えます。

Augmented Campusを実現するためには、物理空間に様々なセンサーを設置して、そこに存在する無限の情報をデジタルデータとして獲得していかなくてはなりません。カメラやマイクもセンサーです。学生や教職員が保有しているパソコンやスマートフォンも、それらがその人々の存在を主張しているという観点ではセンサーです。これらのセンサーを使えば、仮にキャンパスが被災した時に、適切な対応が可能となります。全ての教室に、CO2やPM2.5、VOCなどのセンサーを設置すれば、適切な換気を行なって、よりよい学習環境を作り出すことができます。最近では気象の局所性が激しくなっていますので、グラウンドには熱中症予防を目的とした温湿度センサーが、また建物の屋上には局地的な大雨を記録して予測可能とするための雨量計が必要と考えられます。大きな建物に加速度センサーをいくつもつけておけば、地震等の振動が加わった際に、建物地震のダメージを計算することができるようになります。

このように、物理空間に埋もれた情報をデジタルデータ化してその瞬間に利用可能とし、かつ大量のデータを蓄積して解析可能とすることで、Augmented Campusに繋がる様々なサービスを生み出すことができます。これからのキャンパスネットワークは、データ生成元としてのセンサーを大量に収容する役割や、各キャンパスのご当地データを大量に蓄積する役割、それを知的に解析可能とする役割、そして学生や教職員がデータを有効に活用可能とする役割を担う必要があります。キャンパスネットワークは今後、物理空間にもっと染み出していって、キャンパスにとって価値のあるデータを流通させる基盤となっていかなくてはなりません。

最終更新日: 2019年8月28日

内容はここまでです。